時制を制するシリーズ第2弾です。
第1回目がまだの方は時制を制する①を先に見ていただくことをお勧めします。
さて、今回は過去形と現在完了形を見ていきたいと思います。
特に現在完了形はなかなか概念の理解が難しいと思います。
しっかりとイメージがつかめるように頑張って解説します!
過去形
過去はもう過去のお話
まず、大前提として過去形は過去の話をする際に用います。
え、そりゃそうでしょと言われそうですが、この「過去」というのが漠然としていますよね。
英語の世界での「過去」考え方としては、「現在とは切り離され、距離を感じる」といイメージです。
言ってしまえば、現在とは何の繋がりもない時制なのです。
以下の例文を見てください。
1-1)I went to America three years ago. 「私は3年前にアメリカへ行きました。」
1-2)He was a student at that time. 「彼はその時学生でした。」
1-3)I lost my way. 「道に迷った。」
これら過去形の文章はよく「過去の事実」と言われます。
1)はニュアンス的には、これから3年前のアメリカ話を始めるという感じでしょうか。過去にこんなことがあって...と回想するイメージです。
2)も当時彼は学生だったというだけで、現在も学生なのか、はたまた社会人になっているのかは不明です。
3)は今道に迷っている状況ではありません。昔に道に迷ったという事実があるだけです。
基本的に、過去の話はもう過ぎ去ったことなのです。
したがって、現在の状態や事情とは無関係もしくはそれほど重要ではありません。
過去形で距離をとる
さて、過去形の考え方として、「距離が感じられる」と言いました。この距離が表すものは、時間的な意味だけではありません。
例えば、英語では丁寧な表現をする際に、あえて過去形を使うことがよくあります。
1-4)Could I get the menu? 「メニューをもらえますか。」
1-5)I hoped you could come. 「あなたが来られるといいのですが。」
4)は Can I 〜でも同じ意味になります。しかし過去形であえて距離をとることで、相手により丁寧にお願いしている感じがでてきます。日本語の謙譲語に近い感覚ですね。
5)も I hope you can come. とも言えますが、I hope 「望んでいる」と直接的に言うと相手によってはプレッシャーを感じてしまうことがあります。来られなくても気にしませんよというニュアンスを出すために過去形を用いて表現しています。
また、実現不可なことや可能性が低いことを表現する際に用いる仮定法で過去形(もしくは過去完了)を用いるのも、現在から距離をとることで、現実味の無さを表現しています。
1-6)I wish I had a girlfriend. 「彼女がいたらなぁ。」
1-7)If you had studied harder, you would have passed the exam. 「もっと勉強していればテストに合格していただろうにね。」
6)は彼女がいないという現在の事実に反しているので、現在から距離をとった過去形になっています。
7)はもっと勉強していればという過去の事実に反してしるので、過去から距離をとった過去完了形を使っています。
過去形のもつ距離感、イメージできましたか?
では過去形をまとめてみましょう。
ココがポイント
過去形は「現在とは切り離され、距離感のある時制」
その距離感によって丁寧さや現実との乖離も表現される。
では次は現在完了形を見ていきましょう。
特にそのイメージと過去形との違いにフォーカスします。
現在完了形
現在完了形は現在にまで及ぶ影響
はじめに、現在完了形でもっとも大事なことを言います。
それは、現在完了形では「現在からの視点に重きを置く」ことです。
つまり、現在完了形は現在とつながりがある時制であり、この点で過去形とは大きく異なっています。
現在完了形のイメージは「過去の行為が現在にまで影響している」という感覚です。
もっとわかりやすく言うと、「だから今どうなのか」ということに焦点を置く表現です。
現在完了形には完了・経験・継続・結果という4つの用法がありますが、共通するのは「だから今は」の部分です。
これさえ押さえていれば、用法なんてそこまで気にしなくても構いません。
ではさっそく例文を見ていきましょう。
2-1)I have finished my homework. 「私は宿題を終えました。」(完了)
2-2)I have been to America twice. 「私はアメリカに2回行ったことがある。」(経験)
2-2)He has lived in Tokyo for two years. 「彼は2年間東京に住んでいました。」(継続)
2-4)I've lost my way. 「道に迷いました。」(結果)
1)は例えばゲームをしている最中に母親に宿題はやったのかと尋ねられた場合の返答です。
ここで現在完了形が使われる理由は、過去に宿題をやったということよりも、宿題が終わったから今ゲームしていいよねということを伝えるためです。この「だから今」のニュアンスが現在完了形の特徴です。
2)はアメリカへ2 回行ったことがあるからアメリカについてはある程度知っているよくらいのニュアンスを含んでいます。これは 3)も同様です。2回という回数や頻度の場合は経験、for や since などの期間の場合は継続となるだけです。
4)は道に迷ったということに対して、だから今困っていますというニュアンスまで含んでいます。したがって、道に今迷っている状況なのです。その点で過去形で出てきた話とは異なります。
このように現在完了形は、過去の行為が現在に影響していることを表現します。
過去からずっと現在まで及んでいるイメージです。
過去形と現在完了の違いは今を考えるかどうか
例文2−4)でも少し述べましたが、過去形は現在から切り離された過去について述べるのに対して、
現在完了形は過去の行為や状態が現在にまで及ぶことを表すことを説明しました。
これら過去形と現在完了形でどのような違いがあるのか見てみましょう。
以下は、友人と一緒に昼食を食べる前に友人から朝食は何を食べたか聞かれた際の返答です。
① I didn't have breakfast this morning. 「今朝は朝食を食べていません。」
② I haven't had breakfast this morning. 「今朝は朝食を食べていません。」
①は今朝は食べていないことをただ伝えています。いつもは食べるけど今日は食べていないという感じです。
一方②も食べていないことは同じですが、だから今お腹ペコペコなんだというところまで表現しています。
さて、現在完了形の現在にフォーカスする感覚がつかめましたでしょうか。
現在完了形についてもまとめましょう。
ココがポイント
現在完了形は「過去の行為の今への影響にフォーカス」
過去のことよりもだから今が大切。
さて、今回は過去形と現在完了形について見てきました。
今を基準に、切り離されているか、繋がっているかを考えて使い分けできるようになればネイティブ感覚に近づくことができますね。
頑張りましょう!
最後に前回の時制のイメージ図に、今回の過去形と現在完了形を付け加えた図を載せておきます。

さらに詳しく
現在完了は過去を表す語句と一緒に使えない
現在完了形は yesterday や two years ago のような過去のみを表す語句と共に使うことはできません。
なぜなら、現在完了形はあくまで現在視点だから。
つまり過去だけでなく現在も含まなくてはなりません。
yesterday や when は現在とは切り離された過去の期間を示します。
また、ago は「今から〜年前」と過去のある時点に視点をもっていく語句です。
一方 since は過去のある時点から現在まで視点をもっていく語句です。
つまり過去から現在まで含んだ語句なので現在完了形と相性がいいのです。
また、for は単にまとまった期間を表すので、現在までの期間という意味であれば使用可能です。
注意が必要なのは just と just now です
just は「ちょうど」という意味で、動詞を強める働き (副詞) をしています。
この強める働きが現在完了形の現在視点を強めるため、結果として「ちょうど今」という意味になります。つまり、 just は時間を表す語句ではありません。
一方 just now は now がついていることからも時間的意味があります。
そして just now は now に非常に近い時間を表し、「ついさっき」「ちょうど今」「やがてすぐ」と過去、現在、未来の3つの時間を表現できます。3つもあると意味も曖昧でかつ、過去と現在両方を表すことができないので現在完了では用いることはできません。